たった一本の赤い花

今日は母の日
だから、カーネーションを買ってみました

　母の日に、カーネーションを贈ったのは幼稚園の頃が最後でした
　といっても、渡されたカーネーションを渡しただけでしたが…
　
　たいてい、工作で作った造花もどきと言うにも苦しい手作りのカーネーションでしたけれども…
　
　学生の頃は毎年、なにかしてやりたいと思いながら、お小遣いがなかった私は花を買うと言うのは思いつきもしなかったので、いつもどおりお手伝いをしていたように思います
　姉が何かエプロンやいろんなものをプレゼントするのが羨ましく、悔しく思っていました
　手伝うことがアタリマエで、いまさら『:肩たたき券』なるものを作っても…っとおもい
　何もせずに終わることが多かった母の日
　
　仕事を始めてからはGWが終わったすぐなので、実家に帰る事もなくその日が過ぎていきました
　
『何か送りたいな…』
　
　そう思うのはいつも当日になってからで、花を贈るにも郵送ではすでに間に合わない
　そんな年がまだずっと続くと思ってました
　
　最後に母と一緒に迎えた母の日は、そのことをすっかり忘れてしまっていて
　姉が忘れずに花を贈ったのがすばらしいと思い、同時に自分が情けなく思っていた
　それでもいつもどおり、変わらずのんびりした時間が過ぎていくことが
　何より幸せなことだと思っていたから
　その考えは、今も変わることはありません
　
　
　今年は、初めて自分から一本のカーネーションを買いました
　贈る相手がいないのに、今日はとても買いたくなりました
　
　ラッピングされたカーネーションを受け取ってから、どうしようかと考えてしまった
　
　贈る相手がいないのに、どうしようか
　
　一輪挿しがないし、部屋に飾るのも今引越し中だし困った
　チョット悩んだ
　
　寮に帰り着き、いつも世話になっている寮母さんに渡した
　とても喜んでくれた
　喜んでくれるのは嬉しいけど、そこまで喜んでくれるとは思わなくって戸惑ってしまった
　
『買ってみたけど置くとこないし…』
　
　照れました
　そしてチョットひどい事いいました
　
　そそくさと自分の部屋に帰ってから、初めて人に自ら花を渡したことに気がつきました
　これはかなり照れくさい
　でも、喜ばれるのは嬉しかった
　
　少したって寮事務の前を通ると、寮母さんが嬉しそうに話しかけてきました
　
『白い花瓶が合いそうだから、飾ってみたよ』
　
　今は、チョット大きめの白い花瓶に一本のカーネーションが、寮の玄関に飾られています
　たった一本は寂しそうで、とても誇らしそうに咲いています
　
　花もなかなかいいもんだ